【13】部外者なのは



今日は遊が復帰する日だと言うのに、急に仕事を任されてしまって朝から別行動だ。
さっさと終わらせて遊の元に行こう。


「それではこれで失礼いたします。」
「ご苦労様でした、無限六席。」


ここが最後だ。…!!
遊の霊圧が揺れてる。何かあったんだ。

遊は卍解を使ったせいで記憶喪失になった。しかも、あいつらの記憶だけ…。
昔、遊が心を許し、愛し、失った。その事で自分を責め、後悔して…やっと新しい仲間ができて前を向く事が出来た。
いや…遊はずっとあいつの事を思っていたな…。だから、遊は卍解を使ったんだ。

そしてあいつが戻ってきた。何も知らずに。遊の思いも知らずに…。


「お前の為に戻って来たんや…」
「私の…為…?」
「その手を離してください、平子隊長。」


遊の復帰は仮面の軍勢達には知らされなかった。
京楽隊長の計らいだ。いや、彼らになんて説明するかギリギリまで悩んでいたからでもある。
その結果、何も知らされていない両者が鉢合わせすることになった。

一先ず遊にはその場を離れてもらえたが、こいつをどう対処しようか。


「説明してもらおか?」
「…それは」
「それはボクから説明するよ、平子クン。」
「京楽隊長…」
「他の隊長サン達にも集まってもらったから、来てくれるかい?トキくんも。」


隊長に着いていくと、鳳橋隊長と六車隊長と久南スーパー…?副隊長がいた。


「いやぁ、説明が遅くなってしまって申し訳なかったね。」
「あんた説明する気あったのか?」
「もちろん!…ただ、どうも少し複雑でね。ボクも君たちにどう伝えるか悩んでいてね。」
「複雑…?」
「遠回しにせんと、ちゃんと聞かせてくれ。」
「遊と早く会いたかったのにー!」
「おめぇは静かにしろ!」


京楽隊長は少し俯いた様子で遊ちゃんには君たちの記憶がないのだと言った。
それを聞いた四人は驚いて声も出ない様子だった。


「…はぁ…?何言うてんねん…なんの冗談や?」
「そう思いたい気持ちも分かるけど、事実なんだ。」
「遊はボク達仮面の軍勢の事を誰一人として覚えてないということかい?」
「それはどう言う事なんだ、京楽さん。」
「遊ちゃんは君たちを助けるために卍解を使った。その代価として君たちとの大切な記憶を失ってしまったんだよ。」
「なんやねん…それ…」
「真子…」
「俺たちはそんなに弱ないで!なんでそない事すんねん!…こっちがどんな思いで…」
「何も知らないくせに…」
「なんやて?」


京楽隊長が宥めてくる声が聞こえたが、もう私は歯止めが効かなくなっていた。
こいつらは知らない。遊の過ごして来た100年に何があったかも、どんな思いで乗り越えてきたのかも…


「遊の100年を知りもしないで…どんな思いで卍解使ったかも知らないくせに…‼」
「トキくん、よしなさい。」
「…私はこれで失礼します。」


お前の代わりにずっと遊のそばにいた。お前が早く戻ってこないからこんな事になっているんじゃないか。
遊の事を任せられると思えるまで、私はお前を絶対に許さない。


―お前か私か。

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