【15】助けられていたのは
何度会いに行っても彼女はいつも泣いていた。
最初の頃は初めて会った時のように壁を掻きむしっていたり泣き叫んだりしていたものの、会いに行く頻度が増えるほど遊ちゃんは落ち着いていった。
彼女の役に立つことが出来たと思うと心があたたかくなった。
それでも、彼女はいつも泣いていた。
そんな彼女をそろそろ復帰させろと言う声も上がっていた。この子が今復帰したところで、三番隊は上手く回らないだろう。
むしろ、三番隊はもう前に進み始めている。
そして、遊ちゃんをこのまま放って置くなんて事は出来ないボクはその時決心した。
「ボクのところに来ないかい?ボクも大切な部下が任務に行ったっきりになっちゃってね。」
「春水隊長…っ」
「なんだろうねぇ、君がどこか遠くに行ってしまいそうで。彼らの後を追って行ってしまいそうでね。」
「…っ…うぅ…っ」
「そんな事になったら、ボクはリサちゃんに怒られちゃうよ。なにやってんだって怒るんじゃないかな〜。」
もう君が傷つくのも泣くのも嫌だなと思うんだ。
もしボクのところに来てくれるならこの手を握って欲しいと手を差し出したその時だった。
「遊に触れるな。」
「!…君は誰だい?」
「誰でも良いだろう。遊に触れたらその手を斬る。」
突如現れた綺麗な顔立ちのその子は、ボクに刀を向けて殺気を放っていた。
遊ちゃんから話を聞いた時は驚いたものの、その子"無限 トキ"くんはそばを離れないという。
「遊はどうしたい?」
「私は…春水隊長について行こうと思う。」
「遊ちゃん…」
「ならば、私も行く。私は遊のそばに居る。でなければ、遊をお前の所には行かせない。」
ボク一人では遊ちゃんの事を見守っていてあげられないし、トキくんの思いも尊重して二人とも受け入れる事にした。
「遊ちゃん、第三席で迎え入れたいと思ってるんだけど、どうかな?」
「…あの、お願いが…」
「ん?なんだい?」
「出来れば、五席がいいのですが…」
「五席かい?だけど、副隊長だった遊ちゃんなら「彼の…」
「…」
「彼が背負ってきた"五"を私も背負いたいんです。…私だけは何年経っても、何十年何百年経っても忘れないために…」
そう言っていた彼女は大切な仲間を助けるために、乗り越えてきた100年をいとも容易く犠牲にしてしまった。
でもね、遊ちゃん、他にも道があったんじゃないかと思うんだ。
ボクはその道に君を導く事が出来なかった。
それがボクの後悔。
100年前、ボクなら君の痛みをわかってあげられるだなんて思っていたけど、わかってたあげられていなかったようだね。
今ボクは何をしてあげられるんだい。
―ボクだったのかもしれない。
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