【16】恋ってやつは
"何も知らないくせに"
あいつの言う通りや。
俺は遊の事、なぁんも知らん。
俺のよく知る遊は100年前におる。
今ここで生きとる遊は俺の知っとる遊とは違うんや。
「え〜なんでだよぉ、遊〜!そこは三番隊を忘れないために三席になるべきじゃないかぁ‼」
「ローズ、どんまーい!」
「京楽さん、すんません。俺も少し大人気なかったわ。100年前から遊にまた会える日を、ずっと…。せやから、ここに来てこんな状況になっとる事に戸惑ってしもうたんや。」
「いやぁ、冷静でいる方が難しいさ。」
遊が俺たちを助けるために記憶を失った。その時点で俺の知る遊は死んだ。
そう思うしかないと思うた。
「今度遊ちゃんに説明しようと思ってる。」
「大丈夫なのか?」
「いつまでも君たちに会わせないわけにもいかないし、遊ちゃんも馬鹿じゃない。あの子はきちんと説明しない方が傷つくでしょ。」
「確かにそうだね。」
「京楽さん、俺と付き合うてた事は黙っとって欲しい。」
「真子!」
「いいのかい?」
「それを聞いたら、たぶん遊なら自分を責めてまうやろ。」
だから、一から始めんねん。
100年前のみたいに出会おうやないの。
俺たちが運命の相手ならまた恋に落ちるはず。
昔、遊がそう言うてた。
「遊〜」
「…っ…」
「他人の恋愛でそない泣くなや。」
「だって、あんなに長く付き合ってたのに…別れちゃうなんてっ…」
「運命の相手やなかったんやろ。」
「私たちは…っ?」
「俺たちは運命の相手やろ〜?」
からかうように言うたら、嘘に聞こえるって余計泣いてしもうた。
本気で思うてるよって手拭を差し出した。
「鼻水出てんで。」
「真子さんのバカっ‼」
「冗談やて!痛い痛い!そんな叩かんでもええやろ!」
「冗談ばかり言うと別れるっ‼」
これはあかんと思うてすぐに謝って遊を抱きしめた。
腕の中で大人しくなった遊の背中を子供をあやすようにトントンと叩いた。
「真子さん?」
「なんやー」
「私たち運命の相手ならさ」
「まだ続いとったんか」
「来世でも恋に落ちようね」
「…死神に来世ってあるんか?」
「もうっ‼」
まだ来世やないけど、俺はまたお前と恋に落ちたい。
―するもんやのうて落ちるもんなんやて。
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