【18】夢の中で出会った



夢を見た。
土砂降りの雨の中、しゃがみこんで泣きじゃくる女の子がいた。


「どうしたの?…!」
「私だけ生き残っちゃったの…」


見上げたその女の子は私だった。
よくよく見渡せば、そこは私の精神世界の中だった。


「生き残った…?」
「皆、任務に向かったのにっ…無理にでも着いて行くべきだったのに…っ……私も死にたい…」
「!」



「遊っ!」
「っは…はぁっ…はぁっ…」
「大丈夫?」


目が覚めるとトキがいた。
夢の中から呼び起こしてくれた気がした。

そばにいようかと言ってくれたトキに大丈夫だと伝えて、また横になった。
布団の中で先ほどの自分の姿がよみがえる。
見たことのない自分の姿に少し戸惑った。でも、きっとあれが"本当の私"なのかもしれない。
100年前に大切な仲間を亡くしたと思っていた私なんだ。
一人とり残されてしまって死にたいという私の言葉を聞いて、彼らの絆の深さを感じてしまう。
"記憶のある私"ならこうしてまた会えることを泣いて喜んだだろうなと思うと、なんだか切ない気持ちになった。

その後は眠ることができず、そのまま朝を迎えてしまった。


「おはよう。あの後眠れなかったみたいだね。」
「あぁ…うん、起こしちゃった?」
「いや…。遊、なんでそんなに悲しそうなのか教えて欲しい。」
「トキ…」
「100年ずっとお前のそばにいた。酷く悲しい時期を乗り越えて、やっと前を向けたのに…どうしてここに来て記憶の無い事にも悩むんだ。」
「…だって、その記憶も"私"でしょ?」
「‼…そうだけど。」


なんだか自分の体の一部を削ぎ取られてしまったような感覚なんだよね。
すごく悲しいわけじゃない。でも、ああして私の夢に出てまでも私が私に訴えている気がする。
"私を忘れないで"って。


「遊…まったく…そう言う事は記憶を失っても言うのだな。」
「え?」
「なんでもない。…だけど、私はお前が一番大切だ。どんな事があろうと遊の幸せだけを願う。だから、過去の記憶から解き放ってやりたい気持ちに変わりはない。それだけは曲げるつもりはない。」
「ふふふ、トキってたまに頑固よね。」


ふんっと鼻を鳴らして部屋を出ていった。
トキの優しい言葉で軽くなった体を起こし、死覇装の袖に腕を通した。


―もう一人の私を見つけたいと思った。

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