【19】二度目のはじめまして



こちらに残った仮面の軍勢の四名の方に会って昼食を一緒にする事になった。
もちろん京楽隊長も同席してくれる。


「緊張してるかい?」
「少しだけ…記憶がないので知らない人に会うような感覚で…」
「まぁ、そうだよね。大丈夫さ、彼らも隊長を務めているくらいだ。どんな遊ちゃんも受け入れてくれると思うよ。」
「…」
「トキ君は不満そうだね。」
「不満とかではありません。遊が不安になるようなことをあえてする必要があるのかと思っているだけです。」
「トキ!隊長に失礼でしょ!」


いいのいいのと手をヒラヒラさせて笑う隊長に少しホッとする。
でも、トキはいつになく不服そうだ。私の言う事は基本的に聞いてくれるけど、今日は大丈夫だろうか。

ここだと隊長が足を止めると、少し高級そうな店構をした料亭があった。
きっと隊長に連れて来てもらわなければ自分では一生来ることはないだろう。
お待ちしておりましたと物腰柔らかな若女将が出てきた。
少し長い廊下を他愛もない会話をする若女将と隊長の後ろを静かに着いていく。
やはり緊張はするもので自分の心臓の音が聞こえてくるようだ。


「大丈夫。深呼吸して。同席はできないけど、近くで待機してるから何かあれば私がすぐ駆けつける。」
「…うん、ありがとう。」


トキが私の背中に手を当てそう言ってくれて、とても心強かった。
こちらのお部屋になりますと若女将が襖を開けてくれた。


「お待たせしてすまないね。」
「そんなに待ってへんから大丈夫やで。」
「さぁ、遊ちゃん。」
「失礼いたします。」
「遊ー!」
「きゃあっ‼」
「おい!白!」


急に緑の髪の色をした女の子が飛んできて、勢いでそのまま後ろに倒れてしまった。
久しぶりだね!やっと会えて嬉しいよ!と目を輝かせて話してくる様子に思考がついていかない。
短い銀色の髪をしたガタイの良い隊長羽織を着た人がその子を起き上がらせてくれたおかげで、体の上にのしかかっていた重みがなくなった。


「急にすまねぇな、遊。大丈夫か?」
「白、何してんねん。ほら、立てるか?」
「ぁ、はい…ありがとうございます。」


先日お会いした平子隊長が差し伸べてくれた手を握ると力強く引っ張り上げてくれた。
立ち上がって見上げた瞬間、金色の髪に見惚れてしまった。


「…ホンマに大丈夫か?」
「あっ!はい!すみません!」
「白!遊は記憶が無いねんから、昔みたいに急に飛びついたらあかんやろ!」
「だってぇ!」


そんなやり取りもなんだか懐かしく感じるのは、たぶん本能的に体は彼らを覚えてるからかもしれないと思った。


―とても懐かしい空気感だった。

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