【21】君なら大丈夫



やっとボクも遊に会う事が出来た。
遊とボクはきっと誰よりも長い仲だ。それはだけは自信がある。

藍染との戦いの中で少しだけ彼女と会う機会はあったものの、ゆっくり話すなんて事は出来なくて、やっとゆっくり会える時には遊はボク達の記憶がなかった。
それは傷ついたボク達を助けようとし代価だから遊は悪くないのに、目の前の遊はボク達に深々と土下座している。


「遊!やめ、何してんねん!」
「頭を上げろ!」
「遊ちゃん、もう頭を上げなさい。」
「はい…」


真子や拳西が頭を上げるように言っても聞かない遊に、京楽さんが優しく声をかける。
土下座をやめて顔をあげた遊の表情はなんだか悲しげだった。
昔から優しい子ではあったからボクたちの気持ちを考えたら申し訳なくなってしまったんだね。


「お前はなんも悪くない。やから、そない簡単に頭下げんなや。」
「すみません…」
「遊、ボク達に今までの事を話してくれるかい?覚えてる範囲でいいんだ。今の君の事を知りたい。」


ボクの言葉を聞いて目をうるっとさせた遊は伏し目がちに話してくれた。
皆に言われてよくよく考えてみると100年位前の記憶がすごく曖昧なのだと言う。
三番隊の副隊長だったはずが、気づけば八番隊の五席になっていた。だけど、違和感を感じたことはなかったらしい。


「この前の戦いの事もいまいちよく覚えていません。目が覚めたら四番隊にいましたし、私は"今まで通り"のはずなんです…。でも、そんな私だけみんなと違う気がして…」
「遊ちゃん、そう焦りなさんな。」
「そうやで。誰もお前を責めへんし、思い出せるんであればそれにこしたことはない。せやけど、ここからまた俺らを知って、俺らと新しく前に進めばええやろ。」
「そうだよ!」


やっぱり真子はすごいね。たった一言でいつも遊を安心させて、いとも簡単に笑顔にする。


カンカンカンカンカンカンカンカン
―通達!通達!八番隊管轄にて大虚が出現!京楽隊長は至急現世に出動せよ!―


「ありゃ、すまないね。ボクはこの辺で失礼するよ」
「…っ」
「遊…?」
「行か…ないで…」
「遊ちゃん?」
「はぁっ…はっ…いや…」


警報が鳴り出すと遊の様子が変わった。取り乱し、冷や汗をかいて、立ち上がった京楽さんの裾を掴んでいる手は震えていた。
こんな遊の姿を見るのは初めてだ。

京楽さんは一瞬驚いた様子だったけど、対処法を知ってるのか冷静だった。


「…そうか、発作も振り返してしまったんだね。」
「はぁっはぁ、はっ…」
「発作…?」
「うん、時間がない。また今度説明するよ。トキくーん!」
「はい!遊の事はお任せください。」
「頼んだよ。」


思えば勝手に君に背中を託して、本当は君の人生を背負っていかなければいけないのが隊長のはずなに、あの日君に重荷だけを残してしまったみたいだ。
苦しむ君を見て、自分の無力さを知った。


ーそう勝手に思っていたんだ。

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