【22】もしボクが君だったら
「た、い…ちょう…っ」
「大丈夫だよ、遊ちゃん。ちゃんと帰ってくるから。トキ君がそばにいてくれるから待っててくれるかい?」
「は、い…」
京楽さんはそう言うと申し訳ないけどあとは頼むねと席を外した。
ぽろぽろと涙を流す遊に、ボク達は何をする事も言う事も出来なかった。
「遊、大丈夫だよ。息を吸って?」
「はぁ、っは、はぁ…」
「…はぁ…ごめん、遊。」
トキとか言う遊の部下は中々落ち着かない遊を鬼道で眠らせたみたいだ。
静まりかえった部屋には少し重い空気が流れた。
「お見苦しいところをお見せしてしまい、大変失礼いたしました。」
「…トキ君、説明してもらえるかい?」
「はい…遊は警報がトラウマで発作を起こしてしまうんです。」
「警報…?」
「100年前、自分の大切な人を奪った警報だから…」
「「「‼」」」
「だけど、俺達の記憶はねえんだろ⁉」
「そうですね…100年ですから…記憶は無くとも、体に…心に刻み込まれてるんだと思います。」
トキ君の言葉が心に重くのしかかったのはボクだけじゃないはずだ。
"100年"
ある者には長いようで短く、ある者には短いようで長い。
あっという間のようで、永遠のように長い。
そんな地獄のような時間を生きてきたんだね。
その日は一先ず解散になった。
隊舎に戻る道中、真子は殆ど話さなかった。
「大丈夫かい?」
「あ?…おん。」
「遊の発作には驚いたね。」
「あー…そやな。」
「警報か…そう言われると、100年前のあの日が鮮明に思い出されるね。」
「あぁ…"また明日"って言うたんを後悔してる所や。」
「…そうだね。ボク達は再会を夢見れたけど、遊は絶望しかなかっただろうね。」
「…」
気づけば五番隊の前に着いていて、ほなまたなと手を振って行く真子の後ろ姿はなんとも言えない空気を漂わせていた。
遊、100年前が本当に懐かしいよ。君を連れて歩いたこの道に、今君はいない。
君はどんな未来を描きながらここで過ごしたんだい?
「おかえりなさい。お食事は楽しめましたか?」
「ただいま、イヅル。うん…そうだね。」
「よかったですね!遊さんも記憶がないのがとても残念です…」
イヅルは今のボクの部下だ。
今日は遊との食事会だといえば、嬉しそうにいってらっしゃいと言ってくれた。
100年前のあの日を思い出した。
すぐ戻るから大丈夫だと言って任務に行こうとするボクと真子を少しだけ心配そうにいってらっしゃいませと言った遊の
表情を…。
―100年をたった一人で生きていけただろうか。
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