4*それぞれの戦闘服


午後の授業はヒーロー基礎学。ヒーロー科ならではの科目だ。

「わーたーしーがー」

誰もが聞き慣れたフレーズが聞こる。

「普通にドアから来た!!!」

画風すら変えてしまうスーパーヒーロー・オールマイトの登場に生徒たちの気持ちも昂る。
そして告げられたのは戦闘訓練だった。
更に壁から現れたのは、個人個人にあつらえられた戦闘服だ。

(あれ、確か私が適当に書いてたら消太さんとひざしさんが手直ししてた要望書、結局どんな感じになったんだっけ?)

なまえは自分の出席番号が記されたケースを受け取ると、そんな疑問を思い浮かべていた。他の生徒たちの顔はキラキラと輝いていた。



早速、更衣室で着替える生徒たち。なまえもケースからコスチュームを取り出して着替えようとした、が、思っていたのとだいぶ違った。

「あれ、なまえちゃん、どーしたん?着替えないの?」

コスチュームを手にしたまま固まっていたなまえを不審に思い、麗日が声をかける。麗日はすでにコスチュームを着用していた。

「あ、ううん、なんか…ちゃんと要望細かく書いておけばよかったなぁ、と…」

「それわかるー!私もちゃんと書かなかったから、パツパツスーツんなった…」

と麗日は頬を染めたが、似合っていたし動きやすそうでなまえは良いと思った。
着替えない訳にもいかないし、となまえはコスチュームに着替えた。

「わ…!なまえちゃん、可愛いー!」

麗日が両手を開いて声をあげる。

「可愛いといより、綺麗ね。」

「セクシーだ!」

「あ、はは…」

続いて蛙吹、葉隠のコメントに乾いた笑いを返すなまえ。
なまえのコスチュームは、胸元が編み上げになっているコルセットドレス風のデザインだった。上部のコルセット部分は赤、他は黒に統一されていたが、唯一右腕の肩から手首まで包帯のように巻かれた操縛布だけが白だった。スカートはフィッシュテールになっており、ロングブーツが映える。
なまえの要望は首周りをすっきり、右腕に操縛布、ブーツ、この3点だった。ロックなテイストのデザインは、大凡ひざしさんの提案だろうな、となまえは笑った。
スカートだがもちろんインナーパンツがあるから動きやすいし、ブーツも履き心地抜群だ。しかし…

「なんか、胸元が、心許ない…」

首周りすっきり、と要望は出したが谷間が見えるほどにすっきりさせなくても、と思うなまえだった。フィット感は最高だったので、多少暴れたとしてもズレたりはしないだろうが、不安は不安だった。

(こんな露出多めのデザイン、消太さんが怒りそうだけど、二人で話し合ってたしなー…)

なまえはうーん、と首を傾げながら、集合場所へ向かった。



「あ!なまえちゃ…え、ちょ、それ、は…!」

「出久!前にノートに描いてたデザインだね!カッコいい!」

手を挙げ、緑谷に駆け寄るなまえ。幼い頃、よく二人でヒーローコスチュームを考えノートに描いていたデザインを思い出したようだ。

「(褒められた!)お、おぼ、覚えててててくれたたたたんだね!」

「ん?うん、どしたの。」

「そ、その、なまえちゃんはあの頃描いてたのとは随分違って、えと、大人っぽい、というか…」

緑谷はマスクがあるコスチュームにして良かったと心底思った。なまえの胸元に目がいって耳まで赤いだろうから。

「おい、なまえ。」

「うわっ」

ドン、と緑谷を押し退けてなまえに近づいた爆豪がジッとなまえを見る。

「勝己のその手のやつ何!ゴツくてカッコいいね!」

「ンな事ぁどうでもいいんだよ!てめぇ、授業終わったら速攻でデザインの変更要望書出しやがれ。」

爆豪の籠手に触るなまえを見下ろして言った爆豪の眉間には深い皺が刻まれていた。

「え、なんで?」

「無駄な露出が多過ぎんだわ!闘う気あんのか、クソがッ!!」

「心配しなくても、見た目より動き易いよ?」

ほら、と腕をグルグル回して見せるなまえだったが、爆豪は大きな舌打ちをして去って行った。

「なんだったんだ、勝己。」

(かっちゃん、顔赤かったなぁ。)

「ヒーロー科、最高。」

いつの間にか緑谷の隣にいた峰田が親指を立てて放った言葉に、緑谷は「ええ!?」と返すしかできなかった。



今日のヒーロー基礎学では、いきなり屋内での対人戦闘訓練だと告げるオールマイト。
「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて、2対2の屋内戦を行うと言われ、生徒たちは次々と同時に疑問を投げ掛ける。

「んんん〜〜聖徳太子ィィ!!!」

オールマイトは悶えつつも、アメリカンな状況設定を小さいカンペを見ながら読み上げ、まずくじでコンビを決めることになった。

「あ、みょうじ少女、ちょっといい?」

「?はい。」

オールマイトに呼ばれたなまえは小走りで近くに行くと、オールマイトは大きい体を縮めてなまえに耳打ちをした。

「みょうじ少女を3人グループにするように相澤くんに言われてるんだけど、いいかな。」

「あ、はい、大丈夫です。」

むしろ、拒否権はあるのか?と疑問に思うなまえだったが、オールマイトはホッとした様子で胸を撫で下ろしていた。
A組は21人の為、1チームだけ3人になる。まずなまえを除いた生徒でコンビを作り、どのチームに入るか更にくじを引いた。
結果、轟と障子のBチームになった。

「あ!握力の!よろしくねっ」

「あぁ、よろしく。」

「……。」

障子は軽く返事をしたが、轟からは何も返ってこなかった。

「続いて最初の対戦相手は、こいつらだ!!」

オールマイトが引いたくじは、引きが強いのか弱いのか、いきなり緑谷と爆豪の対戦に決まった。

2023.10.1*ruka



<<back


*confeito*