◆23 Beh!!


ポートマフィア本部内・武器庫 ー

「中也も武器、使うの。」

武器庫内を物色中の中原の背中に、なまえが問い掛ける。

「は、俺には必要ねぇよ、こんなモン。これは手前のだ。」

先程から小銃ばかりを選んでいるのはそのせいか、と腑に落ちると共に、なまえに新たな疑問が生まれる。

「えっなんで私。要らないよ、銃なんて。」

拒絶を示すなまえに向かって、中原は一つの小銃を渡す。
必要無いと押し返すなまえに、ギロリと鋭い眼光で睨みつけ、更に強い力で銃を押し付ける中原。
なまえは渋々受け取る。

「手前は異能に頼り過ぎだ。」

意義は認めてもらえそうになかった為、なまえは一先ず銃を収める。
それを確認した中原は武器庫を出た。

「さぁ、仕事だ。」



なまえの初めての任務は運転手だった。中原の愛車の運転手。
次の任務も、その次の任務も運転手だった。
運転手なんて誰でもできる、自分がすべき事ではない。なまえの中で疑問と不満が広がる。
なまえは"上司"に直談判する事にした。

「中也…いえ、中原さん。」

本部に戻り、少し空き時間ができた為、珈琲休憩をする中原に話し掛ける。
珈琲を飲み乍ら視線だけをなまえに向ける中原。

「私は運転手で雇われた訳ではありません。」

なまえの訴えは聞こえていたが、中原は返事をしなかった。それどころか視線すら外へ向けられ、聞く耳持たずの姿勢。
なまえは中原の目の前まで移動し、再び名前を呼ぶ。然し、中原の態度は変わらず。
痺れを切らしたなまえは中原から珈琲を取り上げる。

「聞いてます、か…!」

途端に跪く格好になるなまえ。中原の重力操作が原因だった。
取り上げた珈琲は床へ落ち、黒い染みを作った。
顔を上げる事も儘ならないなまえは、視線だけで中原を睨みつける。

「手前の異能は脆すぎる、危ういんだよ。」

「そんなこと…誰よりも私が一番理解しています。」

即答するなまえに溜め息を吐く中原。

「理解してんなら我慢しろ。」

ポートマフィアという組織の中に身を置く以上、上司である中原にこれ以上歯向かう事は得策ではないことぐらい解っていた。
視線を床に落とすと、中原はなまえを重力から解放した。



深夜、なまえが仮住まいしているポートマフィア本部の仮眠室に聞こえる、男女二人の話声。
女はなまえ、男はポートマフィア構成員だ。
寝台に並んで座っており、男はいやらしい手つきでなまえの体を撫でていた。
なまえも嫌がる素振りはないが、それとなく逃れる。

「ねぇ、太宰さんについて知ってる事を教えて。」

太宰からの依頼遂行に当たり、情報収集の為、適当な構成員を部屋に招き入れていたのだ。

「太宰幹部の事?そうだな、マフィアになる為に生まれてきた様な人だってのは聞いた事がある。
なんでも血がマフィアの黒だと言われているらしい。」

「他には?生い立ちとか。」

話をし乍らボディータッチをエスカレートする男。
うまくあしらいつつ、更に情報を求めた。

「謎の多い人だからな。首領が先代の時代に突然連れてきた子供が太宰幹部だとか。」

得た情報を頭で整理するなまえ。その間も男は事を進める。なまえをそっと寝台へ押し倒し覆い被さった。
男が背広を脱ぎ捨て、ネクタイを片手で緩めるのを、なまえは下から呆然と眺めていた。
男はなまえに口付けようと顔を近づける。

なまえは心の中で、舌を出す。


2018.08.30*ruka



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*confeito*