◇32 神の咎めの隨に


マレブランケはダンテの叙事詩『神曲』に登場する悪魔の総称。

組織としてのマレブランケは、その悪魔の名前を各々コードネームとしている。
マラコーダをリーダーとして亡者を罰する悪魔達、つまり、非合法組織を罰するのがマレブランケだ。
面子は神曲に登場する悪魔と同じ十二名。
なまえが抜けた後に人員の補充はされていない様子の為、現在は十一名である。
また、なまえの他五名は異能力者であるという。

異能力者の一人、アリキーノは情報屋の顔を持ち、拠点を兼用したバーを営んでいる。なまえはそのバーに金品を持ち込み、貧民街へ送るよう依頼していた。

「ポートマフィアをマレブランケが襲ったと聞いて違和感が有り、今夜不定期開催の会議が開かれるので参加する予定でした。
予定通り参加して、実情を確認してきます。」

一通りの説明の後、なまえは上司二人に申し出た。

「違和感の理由は?真逆、"勘"だなんて言わないよね。」

太宰が静かに問う。
若干なまえは俯き乍ら答えた。

「マレブランケには、暗黙の了解で"ポートマフィアには手を出さない"というものがあります。」

ポートマフィアは闇世界を牛耳る存在。下手に手を出しては返り討ちにあう。触らぬ神に祟りなしの精神で活動している組織は多々存在する。
マレブランケもその内の一つなんだろうと、中原は気にも留めなかった。

「…妙だねぇ。」

然し、太宰は違った。顎に手を当てて思案する。

「マレブランケは貧民街の義賊であるなら、寧ろポートマフィアこそ積極的に狙うべきなんじゃない。」

なまえは苦笑いをする。流石、最年少幹部様、と嫌味半分、敬意を表した。

「マレブランケのリーダー、マラコーダの意思です。
でも、マラコーダの真意を知ることは容易ではないですよ。」

不可能と言ってもいい、と付け加える。

「マレブランケのリーダーだってんなら、今夜の会議には来るんだろ。その時に聞けばいい話じゃねぇか。」

「これだから脳筋は…」

中原の意見に間髪入れず、太宰が否定する。反射的に怒る中原を取り合うことなくなまえに視線を注ぐ。

「恐らく、今夜の会議にマラコーダは現れない。というより、現れたことはないんじゃないかな。」

時間を少し置いてから、ゆっくりと頷くなまえ。

「リーダーと言っても、私はマラコーダに会った事すらありません。
或る人は男だといい、また或る人は女だという。
或る人は菩薩の様だと言い、或る人は阿修羅の様だという。
マレブランケの創設者であり、マレブランケの面々にとっては神の様な存在なんです。
そこに実体の有無は関係ないんです。」

宗教染みた話だと、太宰はさして興味がなさそうに視線を逸らした。


2018.12.02*ruka



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*confeito*