◇ ままならずとも


「いってぇ!手前ェ…いきなり何してくれてんだ、禿げるだろうが!」

「ダッサい帽子持ってるじゃない、あれ禿げ隠しに使えば。」

「巫山戯んなッ!」

呻く中原を無視して、太宰は武装生徒会室へ戻るべく歩き始めた。

「倍にして返してやるからな!クソ太宰!」

太宰の背中に叫ぶと、舌打ちをして刺激の残る頭部を摩る中原。
編み込みは解けてしまっていた。



武装生徒会室に戻る途中、太宰は掌を開く。
中原から毟り取ったものがそこにあった。
金色のシンプルなヘアピン。
太宰はそれが誰のものなのか、気付いてしまったのだ。

「あれ、太宰?」

後ろから不意に声をかけられ、咄嗟に学ランのポケットへそれを押し込み、振り返る。

「なまえ、探したのだよ。一体どこで油を売っていたのかな。」

言葉とは裏腹に、咎める意思が一切見受けられない、穏やかな表情でなまえに話し掛ける。
パタパタと小走りで近寄るなまえは、小さくごめんと謝った。
隣に来たなまえを一撫でしてから、太宰が問い掛ける。

「…ねぇ、ヘアピン、一つ減っているようだけれど、どうしたの。」


2019.04.22*ruka



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*confeito*