◇ 怪我しないでね


敦くんはスケートボードを拾い上げると、助走をつけるべく、私から離れていった。
私も立ち上がり、敦くんの背中を眺める。
どうやら、この防護柵に飛び乗ろうとしているようだ。
充分な距離を取ると、くるりと振り返った敦くんが、ぶんぶんと手を振っている。
控えめに振り返すと、後に元気な声が届いた。
それはもう某ロボットアニメの有名パイロットの如く「敦、いきまーす!」と。
本人は至って真面目にやっているから、可愛いしか出てこなかった。
緩む頬を抑えつつ見守る。

「なまえさんが見てるんだ、転ばないようにしなきゃ…!」

敦くんは、何やら気合い入れをして、防護柵に向かってきた。
転倒こそしないものの、高さが足りなかったり、微妙に位置がズレていたり、中々思い通りの形にはならなかった。
その度に声援を送ると、律儀に反応を返してくれる。
なんて可愛い天使なんだろう。
私は心の底から応援した。
あとは怪我をしないように祈るばかりだ。


2019.06.06*ruka



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*confeito*