◇ 慣れない名だから


"君たち"と一括りにされたのは癪だが、それより気恥ずかしさが勝り、頬が熱を帯びる。

「兎に角、太宰なら今入院してますよ。」

手を団扇代わりに扇ぎつつ言って、それではと背を向けた。

「なまえさんは、これからお見舞いに行かれるのでしょう。ご一緒しても?」

背後から投げかけられた言葉より、再び捕まった右手が拒絶の可能性を潰した。
言い知れぬ重圧を感じ、振り返るとそこには綺麗に笑う人がいた。
今の感じはなんだったのだろうかと思う反面、あの太宰の友人ならば、これぐらいでなければ務まらないのかもしれないと、変に納得もいった。

「構いませんけど、えっと…」

「これは失礼、ぼくはフョードル・ドストエフスキー。よろしくお願いします、なまえさん。」

そう言って、にこりと笑うその人は、矢張り外国人だった。

「どす、ど、ドSスキーさん?」

「態とでしょうか。フョードルで結構です。」

名前も声も、瞳の色も、生まれた国も全然違うのに、どこか太宰に似ている気がした。


2019.07.23*ruka



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*confeito*