◇ 嫌だったから


「…彼らと、親しげにしないで。話したりしないで。笑いかけないで。」

やっと喋ったと思ったら、行動に合わせたように、随分と子供染みたことを言う。
普段の太宰らしくはないが、こういうことは今までにも偶にあったので驚きはしなかった。
本人の気が済むまで付き合ってあげれば、自然といつも通りの彼に戻るから、対処法は間違っていないと思う。
それにしても彼らとは、フョードルさんと…あとは例の林檎自殺倶楽部の人を指しているのだろうか。

「若しかしたら、彼はなまえを勧誘するかもしれない。絶対に行ってはいけないよ。」

「私が林檎自殺倶楽部に行く筈ないでしょう。今のところ、自殺する心算はないからね。」

少し笑いながら答えると、太宰は首筋に擦り寄ってきた。
悪戯に蓬髪が擽るから、堪らず太宰の頭を撫でて誤魔化す。

「私でなくて、太宰が勧誘されてるんじゃないの。」


2019.08.12*ruka



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*confeito*