◆ 思い通りは悔しいから


一抹の不安を何気なく口にしてみた。
畏まって聞くことでもないし、いい機会と思った。
擦り寄る太宰がピタリと止まる。
図星か。
私は太宰の頭を撫でる手を止め、くるりと反転し太宰に抱き着いた。
太宰は一瞬驚いた様子だったが、変な体勢だった私の脚を持ち上げると、横抱きにして優しく抱きしめ返してくれた。
先とは反対に、私が太宰に頭を撫でられる。
太宰の胸に顔を埋めると聞こえてくる心音がひどく心地良く、伝わる体温は暖かかった。

「ねえ、あの白い制服、似合うと思わないかい。」

微睡んでいる私に、意地悪な問いを投げかける太宰は、少しは機嫌が戻ったように思える。
それは良かったけれど、自信有り気な言い方が癪だ。
でもここで意地を張っても仕方がないことは明白。
私は無言で頷いた。
言葉にしなかったのは、せめてもの抵抗だ。


2019.08.15*ruka



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*confeito*