◇ ちゃんと伝えたいから
気を良くしたのか、太宰は更に問いかける。
「私と彼、どちらが恰好良いと思う?」
「……だ…太宰。」
「なに、その間は。」
余程自信があったのか、不満そうな声だった。だって仕様がないじゃない。
フョードルさんも負けず劣らずの美形なんだもの。
どちらと言われても、顔だけならばどちらも整っていると思う。
唯、どちらも内面的に難ありの為、忖度をした上での回答だ。
「じゃあ」
「ねぇ、太宰。行っちゃ嫌。」
恥ずかしいから、顔を見られないよう抱き締める腕に力を込めた。
でもちゃんと伝えないといけない気がして、飾りもなしにストレートに伝えた。
多分、太宰もこの言葉を待っているのではないかと思ったから。
太宰が小さく笑う所為で顔が熱い。
背中を二回叩かれて少し力を抜くと、額に押し当てられる柔らかい感触。
「私がなまえを置いてどこかに行くと思うかい。」
「いつだって自殺しようとしてるじゃない。」
「ん、それはノーカンで。」
拗ねたように反論するも、都合のいい答えが返ってくるだけだった。
2019.08.19*ruka
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*confeito*