◆ 前説


「お願い、なまえちゃん!急遽一人行けなくなっちゃって…」

両手を合わせて頭を下げてきたのは、同じクラスのアヤちゃんだった。

「なまえちゃん可愛いから、きっと向こうも喜ぶし!」

ねっと笑顔を向けたのはフミちゃん。

二人は今日、他校の生徒と合コンを予定しているが、面子が足りず、人数合わせの人材を探しているのだ。
確かに一切その気がない私を選ぶあたりはいい人選だと思う。

「で、でも私そういうのに慣れてないし、盛り下げちゃうから他の人当たって?」

同じクラスということもあり、やんわりと断る。
然し、思いの外この二人の推しが強過ぎて、断りきれず拉致されてしまった。
人数は三対三で、相手は中也くんが元いた学校の生徒らしい。
その時点で嫌な予感はしていた。
その直感を信じて逃げ出せていたら、どんなに良かっただろう。



そして、この奇妙な空間に至る。

「それではぁ、出逢いにー…カンパーイ!!」

アヤちゃんが乾杯の音頭を取り、ジュースが入ったグラスを掲げる。
私は手の震えで、ジュースが零れないように注意するだけで精一杯だった。
そして始まる歓談のひととき。
アヤちゃんもフミちゃんも楽しそうに話し始める。
御手洗いに逃げようかと、僅かに腰を上げた瞬間。
誰かに手を押さえつけられた。


2020.01.15*ruka



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*confeito*