◆ 誰のこと、なんて
「それで。好きな人いないの。」
太宰が宣言通り"合コンごっこ"を続行する。
笑顔の太宰に『さっさと答えろ』と、見えない重圧で脅迫されているようだ。
「い、いません。」
「ええ!?嘘でしょう!いるじゃない、いつも近くに!」
私の答えに納得いかないのか、太宰が身を乗り出してテーブルを叩く。
「うっせぇな!いねえって言ってんだろ!大体、誰のこと言ってんだ。」
「は?そんなの決まってるでしょう、私だよ、私!」
「あン?なんで手前ぇだよ!」
いつものように言い合いを始めた二人に少し苛立ちを覚えた。仕返しをしてやろうと口を開く。
「ねぇ、二人はいるの?好きな人。」
私の言葉にぴたりと動きを止める二人。
いつの間にか太宰が私の手を握る。
「いるとも。とっくに気付いていると思っていたけれど…嗚呼、それとも意地悪かい。」
「意地悪はしてる心算はないけれど…」
苦笑いをしつつ、太宰の手を剥がす。
そしてその隣へ視線を向けると、少し頬を染めていた。
「中也くんは?」
「…お、俺は別に。それに、ここに来たのだって、此奴等二人に必死に頼み込まれてだなぁ…!」
チラリと一瞬だけ目が合うと、大きな舌打ちをして顔を背けられてしまった。
「ふふ、中也も素直じゃないなぁ、気持ち悪い。」
「ンだと!?」
また言い合いが始まりそうなタイミングで、アヤちゃんが突然立ち上がった。
2020.01.17*ruka
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*confeito*