◆ 背伸びの色


続いてフミちゃんがニヤニヤしながら鏡越しに私を見る。

「ど、どど、どっちがって、なに?本命?」

変な質問をするから。不意打ちだったから。心の準備ができてなかったから。
顔が急激に熱くなって、気持ちが追いつかない。
何も化粧道具を持っていない私は、しきりに前髪を直すフリをした。

「赤くなっちゃって、可愛いねなまえちゃん♪ほら、こっち向いて!」

アヤちゃんが揶揄うように言うから、少しムッとしつつ顔を向けると、アヤちゃんは私の唇にリップを塗った。

「可愛い!その色合うね!」

「うんうん、可愛い♪」

二人が煽てるから、鏡を見る。
つやつやに輝く唇が、少し大人びて見えて気恥ずかしくて、直ぐに視線を落としてしまった。
バッチリ化粧を直した二人に連れられ、再びあの閉鎖空間へと戻されたけれど、最初より少しだけ気持ちは軽かった。
何か言われるだろうか、あの二人に。



「戻りましたー!」とアヤちゃんが先陣を切って部屋に戻る。
最後尾から部屋に入り、元の席に座る。

「おかえり、なまえちゃん。おや…口付けしたくなる唇だね。」

目敏い太宰はすぐに気付いたらしく、早速合コントークを放つ。
それでも気づいてくれたことを嬉しいと思ってしまう私も、満更ではないのかもしれない。
すると、太宰の横からも視線を感じたので見てみると、数秒見つめられる。

「まぁ、触ってみたくはなるな。」

ニヤリと笑う中也くんに、照れくさくも矢張り嬉しくて、つい、はにかんでしまった。


2020.01.19*ruka



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*confeito*