◇ 呼ばれませんように


「女子も戻ったことだし、"恒例のヤツ"やりますか!」

奥に座る男子(名前が未だ不明)が元気よく声を上げる。
"恒例のヤツ"と言って取り出したのは割り箸だった。箸は割られていて複数本握られている。
これって、真逆…

「王様ゲームやろうぜ!」

矢っ張り。

「男子って、王様ゲーム好きだねー。」

「えー、エッチな命令とかやめてよー?」

文句を言いながら、アヤちゃんもフミちゃんも乗り気だ。
私は唯々、恐怖しかなかった。
この場に、太宰治という、絶対に権力を握らせてはいけない男がいたからだ。

「これって…全員参加?」

ダメ元で誰にともなく問い掛けると、全員に笑顔で頷かれた。
一人を除いて。
その一人、中也くんに救いの目を向けると、悪い笑顔を浮かべていた。
その瞬間、私は諦めた。



「王様だーれだ!」

仕方なく割り箸を引き、番号を確認する。
なるべく王様になって、できるだけどうでもいいようなつまらない命令を下す。
場の雰囲気とか関係ない。それしか自己防衛の術がないのだから。
然し、私に王様を引き続けるという強運はある筈もなく、普通に番号が書かれた箸を引いた。
三番か…どうか、当たりませんように。

「あ!俺が王様だ!」

奥に座る男子、その二(この人もまだ名前は不明)が王様。
手で番号を隠しながら、命令で番号が呼ばれないように祈った。


2020.01.19*ruka



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*confeito*