◆ 態とだ、莫ァ迦
その後も続く王様ゲェム。
太宰がアヤちゃんに壁ドンしたり、中也くんがフミちゃんに顎クイをする。
その姿を見て、また胸の中でモヤモヤとした。
たかがゲェムだ、何の意味もない。
そう自分に言い聞かせた時、何故言い聞かせるのか疑問に思った。
自問自答する間もないうちに、今度は自分の番号がコールされる。
今回の王様は、奥に座っている男子だった。
「じゃあ六番が、そうだなぁ…王様と棒猪口ゲェム!」
「え…!」
名前も覚えられていない男子と棒猪口ゲェム…ヴァレンタインの時に太宰がやりたがった、アレをやるのか。
王様の命令ならば仕方ない、また早々に折ってしまえばいいだけのことだ。
「なまえちゃんが六番?よっしゃ!こっち来て!」
私は王様の元へ行き、しゃがみ込む。
「なまえちゃんて、よく見ると可愛いね…俺、緊張してきた…っ」
王様の男子はどこか興奮した様子で、私は苦笑いを返すしかできなかった。
「……よく見ると、だって?」
ぼそりと太宰が何か言ったような気がしたけれど、うまく聞き取れなかった。
「じゃあ、そっち側、咥えてね。」
命令通り、棒猪口の先端を咥える。
顔と顔が近くて恥ずかしいと思った、瞬間だった。
黒い何かが目の前を横切って、棒猪口を折る。
吃驚して、黒いものが飛んでいった方向を見るとマイクが転がっていた。
「悪ぃ、手が滑った。」
「手が滑ったのなら、仕様がないねぇ。」
直後聞こえてくる、中也くんと太宰の声。
どこがどう滑ればマイクが棒猪口にクリーンヒットするのか。
若し顔面に当たっていたら…私も王様の男子も顔が青褪め細かく震えた。
2020.01.22*ruka
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*confeito*