◇ 拒否してよ
「なまえが解り易くて助かったよ。」
太宰が可笑しそうに笑いながら言う。
バレないように気をつけていたのが裏目に出たのだろうか。
「どうせ、私は単純ですよ。」
「ふふ、そんなに怒らないで。ほら、隣においで。」
手招きをされるが、扉を隔てて直ぐそこに皆がいる。というか、磨硝子の向こうに貧乏揺すりをしている影が…
警戒する私を見透かして、太宰が笑った。
「これも王様の命令、だよ。」
そう言われてしまうと反論できない。
溜め息を吐いて腰を上げる。
「…仰せのままに。」
太宰の隣に移動すると、頭をポンポンと叩かれた。太宰を見上げると、少し怒っているようだった。
「怒って、る?」
「当然でしょう。」
なぜ当然なのだろう。首を傾げて見つめると、頬を抓られる。
「いひゃい…」
「そーゆーの。」
頬を抓っていた手が、今度は頬を包む。
「そういう表情とか、仕草とか、安売りしないで。抑も、私はこんな場に来たこと自体を怒っているのだよ。」
解る?と目を覗き込まれる。
「大体ね、なまえってば隙が有り過ぎるのだよ。棒猪口ゲェムの時のアレ、なんだい。私がやりたいって言った時は拒否したくせに、従順に言われるがまま、会ったばかりの男のモノを咥えちゃってさァ!然も恥じらいながら咥えるとか、男を煽っているとしか思えないよ!」
謂れのないイチャモンをつけられ、反論したくも太宰の勢いに押され、何も言えず聞き役に徹する。
「極め付けは、ほっぺにチューだよ!あれ、私が身代わりにならなかったら、していたでしょう。王様の命令なら何でもするの!?」
信じられない!と怒っているが、さっき中也くんに"王様の命令は絶対"って言ってたよね、この人。
理不尽さを感じたが、まぁ全部心配からきているのだろうということは伝わった。
2020.01.25*ruka
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*confeito*