◇ 白旗です


部屋に戻ってきた太宰と中也くんの機嫌は直ったみたいだったけれど、他の二人の顔が青褪めていた。
一体、お化粧直しで何があったのだろう。
戻ってきた太宰は当然のように私の右隣へ、中也くんは左隣へ座る。
なんか脇をガッチリ固められた気分。

「大体さ、よく見なくたって、なまえは可愛いのにね。彼らは節穴だよ。」

「好みもあるだろうが、モテないわけねぇだろ。」

「だよねぇ。人間から蛞蝓まで、幅広く好かれているのだもの。」

「あン?人間から青鯖までの間違いだろうが。」

私を挟んで会話をする太宰と中也くんは意気投合しているんだか、してないんだか。
というか、その話題に上がってる人全員がこの場に居るんですが。
気不味い空気が流れる。然し二人はそれを分かっていて、敢えて会話を止めない。
私は溜め息を吐いて白旗を上げた。

「…私、そろそろ帰ろうかな。」

すると太宰はパッと明るい表情になって立ち上がる。

「やっと飽きてくれた!?帰ろ帰ろ、さァ行こう!」

「俺も帰るぜ。」

太宰は私の腕を引っ張り、無理矢理立たせようとするから、思わずよろけてしまうが、中也くんが反対の手を取り支えてくれた。

「ほら、行くぞ。」

中也くんに手を引かれ、太宰に背を押されて、カラオケボックスを後にする。
なんだろう、この安心感…もう胸のモヤモヤはなくなっていた。


2020.01.31*ruka



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*confeito*