◆ 気付く頃でしょうか


時を同じくして、生徒指導室から二つの黒い影が現れた。

「やあっと終わった、なんで私まで怒られなきゃならないのさ。」

「あ?元はと言えば手前が!」

「あー煩い、煩い。」

太宰と中原はワーワーと言い合いながら昇降口へ向かう。

「本当なら今頃はなまえと放課後デェトしてた頃なのに……と、随分とまぁ慌てん坊さんだね、君のクラスじゃないの。」

昇降口には乱雑に脱ぎ捨てられた靴が一足、蓋が開けっ放しの下駄箱が一つ。
太宰が言うように、中原のクラスの下駄箱に位置していた。

「誰だよ、だらしねぇな。」

中原が下駄箱に貼られている名前を確認すると、中途半端に空いていた蓋を全開にして中を確認した。
中は空っぽ、在る筈の上履きはなかった。

「…なまえの奴、忘れ物でもしたのか?」

「え、何、これなまえのなの?真逆!私と放課後デェトがしたくて、慌てて戻ってきたのかも!?」

「目出度ぇ奴だな。」

中原は溜め息を吐き、脱いだばかりの上履きを再度履いた。

「ちょっと!抜け駆けは許さないよ。」

太宰も負けじと、歩き出す中原を追った。


2020.02.25*ruka



<<back


*confeito*