◇ 嘘を吐かずに生きることですよ


「なまえ、手前…泣いてんのか!?」

「何があったの、なまえ。」

「太宰まで!なんで…」

駆け寄る太宰を確認すると、更にボロボロと涙を零した。
なまえはそれを掴まれていない方の手で乱暴に擦ると、何でも無い、と俯いた。

「何でもなくて泣くのかよ、手前は。」

「なまえ、私は中也と違って優しいから言ってごらん。」

二人の問い掛けに、なまえは首を振って小さな声で謝罪をした。
そっと中原の手に触れ、拘束を解くと、徐ろになまえは携帯端末の電灯機能を起動する。短いスカートを気にも留めず、前屈みになり、昇降口周りの地面を照らしながらウロウロした。

「ちょ、なまえ!パンツ見えちゃう!中也、見ないでよ!」

何故か太宰が、慌てて中原に見られないように体で隠す。
中原が透かさず「見ねぇよ!」と反論するもなまえは動じなかった。
必死に何かを探している様子のなまえに、中原が軽く息を吐く。

「何探してんだか知らねえが、手伝ってやるよ。どんなのか教えろ。」

すると、なまえの動きが止まり、鼻声で再び謝罪を口にした。

「ごめ、なさい…おそろいの奇跡の魚のキーホルダー、落としちゃったみたいなの…」

太宰と中原は拍子抜けした顔を浮かべたが、涙が止まらないなまえがそれを見ることはなかった。
太宰がなまえの頬を流れる涙を拭いながら言う。

「解った、私たちも一緒に探すよ。」

「仕様がねえな。ほら、いつまでも泣いてたら探せねえだろ。」

中原はなまえの頭をポンと叩くと、自分の携帯端末の電灯機能を点け探し始めた。


2020.02.28*ruka



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*confeito*