◇ 実に簡単なお仕事です
「このキーホルダーを捨ててくるだけで一万?」
フョードルに呼び止められた男子生徒は、手渡されたキーホルダーを不思議そうに眺めながら問う。
「はい、誰にもバレずに。場所は…そうですね、植木の辺りが良いでしょうか。昇降口周辺にありませんか。」
にこりと微笑むフョードルから悪の意識は感じられなかった。
「但し、成功報酬です。捨てたらまた、此処へ戻って下さい。その時にお支払いします。」
男子生徒は了承し、キーホルダーを握り締め出てきたばかりの昇降口へと戻った。
日は暮れ、殆どの生徒が帰宅していた為、男子生徒が誰かとすれ違うことはなかった。
昇降口に程近い植え込みの辺りに着くと、周囲を見渡した後、キーホルダーを投げ捨てた。
「これだけで一万か、楽勝だな。」
男子生徒は軽い足取りでフョードルの元へと戻って行った。
その後ろから現れた人物がキーホルダーを拾い上げる。
土を払いポケットに仕舞うと、男子生徒を追った。
2020.03.01*ruka
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*confeito*