◆ 嘘は常に許されるべきもの


キーホルダーを捨て置いた男子生徒は、報酬を貰うべくフョードルの元へ戻ったが、どこにも居ない。

「おい、どこだよ、言われた通り捨ててきてやったんだ!約束の一万寄越せ!」

キョロキョロしながら叫ぶ男子生徒の肩を叩いたのは、探していたフョードルではなく、太宰だった。

「若しかして、探しているのは白い学ランの露西亜人ではないかな。」

笑顔の太宰に、男子生徒は肯定の言葉を返す。

「言われた通り捨ててきた、と言うのは…これの事かな?」

太宰は先程植え込みで拾ったキーホルダーをポケットから取り出し、見せつける。

「あ!なんでそれ…!」

男子生徒が取り返そうと手を伸ばすも空振り、太宰がその伸びた腕を掴む。

「約束の一万円とやらは成功報酬かな。残念、見事に失敗で貰えないね。というより、最初から雇い主に支払いの意思はなかった。」

太宰は腕を掴む手の力を強める。
男子生徒は痛みに顔を歪め、太宰は口元だけで笑った。


2020.03.02*ruka



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*confeito*