◇ 嘘は愛すべきもの


「うまい話には裏があるって言うだろう。想像力が乏しい君に手蔓ヒントをあげよう。
考えてみてごらん、何故高々キーホルダー一つを捨てるだけで一万円もの報酬が提示されているのか、このキーホルダーの価値は何なのか。
少し見れば高価な宝飾品でないことぐらいは解るだろう。となると、キーホルダーそのもの以外に価値が存在している。
ものがキーホルダーなのだから、その所有者にこそ価値がある、という処まで辿り着ければ充分だ。
唯、今回の場合、所有者は間者…純粋な被害者さ。この意味が解るかい。」

男子生徒は得体の知れない恐怖心に駆られ、無言でぶんぶんと首を左右に振った。
その姿に太宰は軽く息を吐く。

「小さい脳なりに少しは考えたらどうだい。君がやったことは、愚かな行為以外の何ものでもないということだよ。」

男子生徒は力の限りで腕を振り、太宰の拘束から逃れる。太宰の冷たい視線に一瞬声を詰まらせるも、虚勢を張り反論した。

「お、俺は頼まれた通りにしただけだ!そのキーホルダーが誰のものだとか、そんなことは関係ない!」

言い捨て背を向けた男子生徒に、態とらしく溜め息を吐く太宰。

「君は頼まれたら殺人もするのかい。」

「それは…」

「同じことさ。一応忠告しておいてあげよう。相手が悪かった、触らぬ神に祟りなしってね。君がどうなろうと微塵も興味はないけれど、今後はよく考えてから行動した方がいい。」

太宰は少し笑って、なまえ達の元へ戻った。


2020.03.03*ruka



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*confeito*