◇ 人は誰も裁き手とはなり得ないのです
「ふふ、照れちゃって。可愛いなぁ。」
駆け足で離れていく背中に太宰が呟く。その横で同じ背中を見つめながら中原が低く言う。
「で、どこの何奴だった。」
「…本丸は他校の生徒、実行犯はうちの生徒だったよ。」
「他校の生徒?…手前ぇ絡みか。」
中原は舌打ちをすると、太宰を横目で睨みつけた。太宰は鬱陶しそうに溜め息を吐く。
「そんな怒らなくたって解ってるよ。本丸は私の方で対処する。実行犯の方は忠告はしておいたし、中也の好きにするといい。」
それを聞いた中原は、一度上に伸びをして首を左右に曲げると、ポキポキと小気味良い音が鳴った。
「俺は先に帰るぜ、なまえのことちゃんと送ってけよ。」
「言われなくても。」
手洗い場からなまえが戻る頃には、既に中原の姿はなかった。
2020.03.05*ruka
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*confeito*