◆ 真実を語る者は、機知のない人間だけです


翌日、一人の男子生徒が前触れ無く転校した。
神の逆鱗に触れ神隠しにあっただの、交通事故に遭い、長期入院しただのという様々な噂が流れたが、真相を語る者はいなかった。

「ね、噂聞いた?怖いよねー!」

武装生徒会室でなまえが中島に話し掛ける。

「僕の隣のクラスの人みたいです。何か悪いことをしたって聞きましたけど…」

「触らぬ神になんとやら、だよ。敦くんが無事で良かった。」

なまえと中島が顔を合わせて微笑み合う。
そこでなまえが何かに気がついた。
大抵こういう場面では邪魔が入るのだが、今日は穏やかだ。キョロキョロと周りを見渡してから中島に問う。

「あれ、今日、太宰いないね。」

「え、今更ですか?ずっといなかったですけど…なまえさん、何も聞いてないんですか?」

中島が呆れたような、憐れむような表情をする。うーん、と悩む格好を取った後、ニッコリ笑って否定したなまえを見て、中島は少し太宰に同情した。


2020.03.06*ruka



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*confeito*