◆ 冷やかしはお断り


私の視線が後方へ向けられている事に気がついた男子生徒は振り返ろうとしたが、それより早く太宰が彼の肩に手を置いた。

「冷やかしはいけないなぁ、少年。」

低く冷たい声色に肩を大きく揺らす。

「解るよ、君たち下級生はなまえと会話する機会なんて滅多にないものね。好機と思ったのかも知れないが、係仕事を全うしているなまえの邪魔になるとは考えなかったのかな。
まったく、自分の欲求ばかりを優先するような輩をなまえが相手するとでも?理解できないのならできるようになるまで私が」

「太宰、もういいから、離してあげて。」

話し続ける太宰を止めに入ると、大きな舌打ちをされた。すると男子生徒たちは謝罪を叫びながら走り去っていった。

「なんだ、本当に怪我してなかったんだ、よかった。」

私はぼそりと呟きながら、ほっと胸を撫で下ろした。

「どこまでお人好しなのさ。」

太宰は呆れたように溜め息を吐きながらそう言うと、先程まで男子生徒が座っていた丸椅子へ腰を降ろす。
その表情は、若干不機嫌そうだった。

「仮令、冷やかしだったとしても、怪我がないのならそれでいいじゃない。」

簡易寝台から離れ、待機椅子へ戻ろうとしたが、腕を掴まれ体勢を崩す。腕を引いた張本人、太宰にすっぽり抱きかかえられてしまった。

「ちょっと!」

「私は怪我人だよ。ちゃんと看てよ、救護係さん?」

怪我をする程、真面目に競技をしていたとは到底思えない。結局太宰も冷やかし、先程の彼らと同じではないかと呆れた。

「離して、この体勢じゃあ手当てしてあげられない。」

「えー?こうしているのが一番の手当てなんだけどなあ。」

愉しそうに言いながら擦り寄ってくる。

「怪我人なんでしょう、患部は?」

「患部は心だよ、さっきので傷ついた。暫くこうしてたら治るかも〜」

太宰は私を拘束する手を強めた。


2020.09.25*ruka



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*confeito*