◆ 応援の力
救護係を交代して、私は入場門へ向かっていた。次は私の出場競技である玉入れが行われるからだ。
走るのだけは回避したく、大して力が強いわけでもない私は消去法で玉入れの選手となった。
唯、やるからには勝ちたい。全力で玉を投げ入れる。
「みょうじさん?」
ひっそりと自分を奮い立たせていると、ふと背後から声が掛かった。
「あ、坂口くん。」
振り返ると眼鏡を押し上げる坂口くんが居た。お互いぺこりと会釈を交わす。
あまり二人きりで会話をしたことはないが、“共通の人物”により苦労している者同士、妙な親近感を感じている。“共通の人物”とは、言わずもがな太宰である。
会話をする間も無く入場となり、それぞれ白線で引かれた円上で輪になる。号砲の合図で、一斉に紅白の玉が宙を舞った。
「安吾〜頑張れ〜」
坂口くんを応援する太宰の声が聞こえてきた。放送係の仕事は大丈夫だろうか。私が競技をしている間はフォローできないからなぁ…
「うふふ、安吾が体操服を着て玉拾いしているなんて新鮮な光景だなぁ。」
「ほら、そこに落ちているぞ……否、教師が特定の生徒に肩入れするのは良くないか……すまないが、自力で頑張ってくれ。」
織田先生の声援も聞こえた。あの三人は何故か仲が良いからなぁ、と思いつつ必死に玉を拾っては投げた。
命中率は五割といったところか。役立たずな自分が惨めに思える。
「なまえさーん!右後ろにいっぱいありますよ!頑張って下さい!」
一際大きな声で応援してくれたのは敦くんだった。
人から受ける応援が、こんなにも心強いものだとは思わなかった。萎みかけていた心が一瞬で持ち直す。
敦くんの情報通り右後ろの玉を拾い上げ投げ入れる。
「みょうじも頑張れ。」
織田先生の声援が耳に届く。坂口くんのついでだとしても嬉しかった。
「なまえ〜頑張ったらご褒美に私がなでなでしてあげるからね〜」
太宰のは声援とは思えなかった。
「変態青鯖は黙ってろ!なまえ!もっと手首効かせて投げてみろ!」
中也くんの助言を受け、手首を効かせて玉を投げ入れる。すると吸い込まれるように玉が入っていく。コツを掴み始めたところで、無常にも終了の合図が鳴り響いた。
結果は接戦の末、紅組の勝利だった。
「みょうじさん、お疲れ様でした。」
退場時、坂口くんが声を掛けてくれた。
「坂口くんもお疲れ様。地味に疲れるね、玉入れって。」
「えぇ、まったくです。体力には自信があったのですが…」
お互い苦笑いをしながら、また会釈をしてそれぞれの組へと戻った。
2020.10.07*ruka
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*confeito*