◇ 想定内の逃亡者
「あ、国木田先生。其処、邪魔ですよ〜。折角飛距離が伸びていたのに。」
突然聞こえた太宰の言葉に顔を上げ、その視線の先を追うと、国木田先生と敦くんが居た。
震える国木田先生の足元には紙飛行機が…
「しょうがないなぁ。持ってきて下さ〜い。」
何がどうしてそうなった。否、大方の予想はついていた。太宰の投げた紙飛行機が国木田先生に命中したのだろう。
偶然か、将又狙ったのかは不明だが…恐らくは後者だ。
「太宰ィーッ!!」
「ふふふ、余り競技の前から体力使わないほうがいいですよ〜」
逃走劇を繰り広げる太宰と国木田先生を溜め息一つで見送った。
「国木田先生、大丈夫かな……あれ?なまえさん?」
放送天幕に座る私に気付いた敦くんが声を掛けてきた。小走りで放送天幕に近付いてくる。
「どうしてなまえさんが放送天幕に?」
先程の中也くんと同じ反応をされる。彼も私が救護係だということを知っているからだ。もう私の表情は無だった。
「うん、今さっき放送係の人間が一人逃走したから、その穴埋めをね。」
一部始終を見ていた敦くんは名前を言わずとも誰の事か悟り、憐れむような眼差しを向けられた。
「そんな事より、この後の継走に出るんでしょ?然も最終走者だって聞いたよ。頑張ってね!」
両手で拳をつくって、軽くガッツポーズをとると、同じ恰好をして元気な返事が返ってきた。
その後、二人で笑い合い、暫し穏やかな時間が流れた。
2020.11.30*ruka
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*confeito*