◇ 寄り道 4
茹蛸と見間違える程、真っ赤になっている敦くん。
返事をしながら敦くんに向き直ると、賢治くんとは反対側の頬に柔らかい感触。
「へ?」
驚きのあまり気の抜けた声が出る。
敦くんは即座に私と距離を取る。
太宰は再び固まっていた。
賢治くんは私の頬をぺろりと舐めたが、敦くんは私の頬に軽い口付けをしたのだ。
「ご、ごご、ごめんなさい!チョコが付いていたので…!」
両手を左右にぶんぶんと振りながら弁明する。
そんなに必死になるなら、抑もこんな事しなければいいのに。
びっくりはしたが可愛い弟たちなので悪い気はしない。
敦くんにも「ありがとう」とお礼を述べ、戻っておいでと手招きをする。
「…なまえ」
「はいはい」
どうせ此奴もやりたいとか言い出すんだろうと、薄々感づいてましたよ。
「残念でした。もうチョコはついてませ…」
両頬を両手で包み、太宰に返事を返すと、頬ではなく額に口付けを受ける。
不意打ちに思わず固まってしまった。
「私は理由がなくてもなまえに口付けるよ。」
そんな優しい顔で、チョコより甘い声で言われたって、ときめいたりなんて、しないんだから。
2018.10.18*ruka
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*confeito*