◆ 帰り道


みんなでクレープを食べた帰り道。

「では、僕と賢治くんはこっちなので。」

敦くんと賢治くんが手を振り遠ざかっていく。
太宰は私を家まで送って行く気らしく、隣で二人に手を振っていた。
帰りが遅くなる日はいつもそうだった。
然りげ無く太宰が傍に居て、家に入るまでを見届けられる。
有難いけれど、その分太宰の帰宅時間が遅くなる事と、遠回りになる事が少し申し訳ない。

「太宰、ここ右に行った方が早いでしょう。今日はここでいいよ、いつもありがとね。」

丁字路で立ち止まり小さく手を振り、太宰にお礼を言った。
きょとんとした表情を見せた後、左右に振っていた手を捕らえられ指を絡ませられる。
所謂、恋人繋ぎ状態。

「ねぇ…真逆、なまえが女の子だから毎度毎度送ってると思ってるの。」

当然、そうだと思っていたので、こくりと一度頷くと、真顔で軽い溜息を吐かれる。

「いいかい、私はね、女の子だから送っているのではなく、"なまえだから"送っているのだよ。」

少し考え、太宰の言葉を脳内で反復させる。

私だから
私、だから
それって…

鈍感な私でも、その言葉の持つ意味を意識せざるを得なかった。
顔に熱が集まってくる。
気付くと太宰はニヤニヤして私を見ている。若しやこれは…

「太宰、面白がってるでしょ。」

「少しね。だけれど、今の言葉は本心だよ。」

太宰の思惑通り勘違いしてしまった事と、からかわれた事による羞恥心から、手を振り解き顔を背ける。

「兎に角!私なら大丈夫だから、じゃあね!」

吐き捨てるように言って、その場を立ち去ろうとした。


2018.10.19*ruka



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*confeito*