◆ わかってるくせに。


生徒会を終え、帰路につく。何とか敦くんからは逃れられたのだが、隣を歩く男、太宰はなかなか諦めてくれない。

「太宰は行かないの?」

並んで歩きながら顔を見上げて聞くと、視線だけ向けられて、軽く溜め息を吐かれる。

「なまえが行くなら行くとしようか。」

行けないって言ってるのに。
こういう時の太宰は本当に意地悪だ。耐えられなくて視線を逸らす。
何も、悪いことをしている訳ではないし、私が誰と休日を過ごそうと私の勝手で、太宰には一切関係のないことなのに。
なんだろう、この気まずさは。

すると太宰は急に立ち止まり、私の名を呼んだ。少し前に進んでいた私は体半分振り返る。
太宰がゆっくりとした動作で、私の髪を一束掬い、そのままその束に静かに口付ける。
鷲色の双眸は、じっと私を見据えていた。
心を、全てを、見透かされそうな眼差しだった。

一体、彼は私にどうしろと言うのだろう。
私を、どうしたいのだろう。

「わかってるくせに。」


2018.11.19*ruka



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*confeito*