◇ 白旗
ドキリと心臓が跳ね上がる。
本当に心を読まれたのではないかと思った。
直ぐに表情に出てしまったのだろう、太宰にクスリと笑われた。きっと私は一生、この目の前の男には隠し事はできないのだろう。
観念して白状することにした。
「土曜日は…友達と、遊ぶ約束をしてるの。」
「誰と。」
さっきもこんな遣り取りをしたような気がする。なんとなく、太宰は私が誰と約束をしているのか、気づいているのではないかと思う。
「わかってる、くせに。」
仕返しとばかりに言ってみた。
少し驚いた太宰は、私の髪を手放すと、するりと手の甲で頬を撫ぜた。
太宰の表情は怒っていると思うけれど、哀し気とも取れるようだった。そんなの反応に困る。
「わかっているとも。なぜ今回はよりによってあのちびっこなんだい。」
呆れたような口振りで言う太宰が歩き出したのに合わせて、私も再び横を歩く。
結局経緯を洗いざらい太宰に話す。
途中何回も中原くんへの暴言を吐き捨てる太宰に、一通り話終えると、それは大きな溜め息をロングブレスで吐かれた。
小言をくどくど言われるかと思い身構えていたが、太宰は前を向いたまま、何か呟いただけだった。
そこでほっとしてしまった私が莫迦だった。
太宰がそれだけで、済ます訳がないのに。
「そっちがその気なら、私にも考えがあるよ、中也。」
2018.11.21*ruka
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*confeito*