◆ キセキの魚


行き先は、最近リニューアルオープンした水族館とのこと。
クラスの女子の間で、結構話題になっていたので行ってみたいなー、とは思っていた。

話題になっていた理由は"キセキの魚"だった。
なんでも、大水槽に星模様の魚が1匹だけ泳いでいて、見つけると願いが叶うとか。
そんな迷信じみた話、子供っぽいと思われるかもしれないが、二人にも話してみた。結構有名だったらしく、二人とも知っていたけれど、呆れられたりしなかったのが嬉しかった。

「見つけような、その魚。」

私の頭に手を置き、ニッと笑う中原くんがやたらイケメンに見えた。うん、と満面の笑みで答えると、横から勢いよく手が飛んできて、中原くんの手を払いのける。
と同時に、私の頭もべしっと叩かれた気がする。態とか。

「なまえに気安く触らないで。」

私と中原くんとで太宰を睨むも、そんなことは気にも留めないで、私の頭を撫でながら問う。

「なまえには叶えたい願いがあるの?」

「うーん、まぁなんとなく。」

平凡な私に、そんな大それた願いなどない。でも何もない訳でもなかった。


2018.12.08*ruka



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*confeito*