◇ サァビス精神
三人並んで座り、イルカショーを観る。賢いイルカ達が指示の通りに跳ねたり、輪をくぐったりと芸達者振りを披露する。
サァビスなのか、観客席に水飛沫を飛ばすべく、イルカ達が尾鰭をバタバタと振りだした。
「うわぁ!」
咄嗟に屈むも間に合わないかなと思い、濡れるのを覚悟していたが、一向に濡れる気配はない。うまいこと避けられたのかと思ったら、そんな訳もなく辺りが暗いことに気付く。
瞬きを何度か繰り返しても、暗いまま。のしかかる少しの重み。
「冷てぇ…おい、太宰、さっさと退け!」
「結構かかったね…なまえ、濡れなかったかい。」
そんな会話のあとに光を取り戻す。
どうやら両脇から二人が、私に覆い被さって、水飛沫から守ってくれたらしい。ちょっと気恥ずかしかったけれど、二人にお礼を言った。
躍動するイルカはお利口で可愛くて、見入っていると、あっという間に時間は過ぎた。
楽しかったね、と振り返ると、二人とも笑顔だった。なぜか太宰が私の頭を撫でた。
2018.12.21*ruka
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*confeito*