◆ 最も難しい願い事
「却説、無事にキセキの魚も見つかった訳だし、なまえの願い事を教えてもらおうか。」
右手を犠牲に後退りするも、後ろの中原くんに肩をガッチリ抑えられる。振り向くと、そこにも不適な笑みを浮かべた人が居た。
「まあ、聞く権利はあるよなァ?」
これは言わなければ解放してもらえないパターン。顔に熱が集中する。
でも懸命に一緒に探してくれた二人に黙秘を突き通すのも失礼か。
一呼吸を置いて視線を落とす。どこを見て言ったらいいのか、わからないから。
「太宰と、中原くんが…」
「え?なに、聞こえないよなまえ。はっきり言ってごらん。」
「太宰と中原くんが、今より少しでも仲良くなれますようにって!」
太宰が意地悪するから、半ばヤケクソで若干大きな声で言ってしまった。
目の前の太宰は口を手で押さえて笑いを堪えているし、私の肩を掴んだままの中原くんは、表情こそ見えないけれど手が震えている。
子供染みた願い事だってわかってるし、私が願ったところでどうにかなることでもないって百も承知だけれど、願ってしまったんだもの。仕様がないでしょう。
太宰は笑いながら、私の頭を撫でた。
「なまえ、私が叶えてあげられる願いなら全力で叶えてあげようと思ったのだけれど、それは無理。
世の中で最も難しい願い事だよ。」
「違いねェ。」
溜め息をほぼ同時に吐いた太宰と中原くん。何だ、こんなにも早く叶ってるじゃない。
なんて言ったら、また口喧嘩を始めそうだから、笑いながら飲み込んだ。
2018.12.27*ruka
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*confeito*