◇ 海月爆弾
最後の展示コーナーは海月だった。
優雅に上へ下へ、右へ左へ。縦横無尽に泳ぐ海月。泳ぐというよりも、漂うという表現が的確か。
先の大水槽で疲れた私を癒すには、余りあるほど幻想的だった。
ただただぼーっと眺める。
いくらでも眺めていられる気がした。
私の脳内から思考能力がすっぽり抜け落ちそうになった時、左頬を何度か突かれ引き戻される。
大体の想像はついていたが、一応聞いておこう。
「何してるの、太宰。」
呆れながら左上の太宰を見ると、真剣な面持ちだった。正直、胡散臭い。
「いや、海月となまえの頬はどちらが柔らかいのかなと思ってね。」
海月に刺されて死ねばいいのに。
太宰から視線を逸らし、ぷいっと右に顔を向けると、中原くんと目が合った。
「本当に海月好きなんだな、みょうじ。ずっと見てたのに、少しもこっちを見ようともしねぇ。」
ははって笑っているけれど、中原くんの言葉は中々の爆弾だと思う。
ずっと見てたって、私を?
きっと、私があまりにも真剣に海月に見入ってたから、面白がって見ていたのだろうけど…
その言葉がぐるぐると頭を廻って、後の海月たちがどんなだったかすら思い出せない。
2018.12.28*ruka
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*confeito*