◇ 貸し借りなんて忘れてた


とても有意義な休日になった。二人はどうだっただろうか。いつも通り私を真ん中に、並んで駅まで歩く。

「みょうじ、楽しかったか。」

中原くんが私に問い掛ける。同じことを考えていたみたいだ。

「すごく楽しかった!ありがとう。」

満面の笑みとともに、素直な気持ちをそのまま伝えた。中原くんも笑顔を返してくれたから、きっと同じ気持ちであるのだろう。

すると目の前に差し出される袋。私も同じものを持っている。先程のお土産屋さんの袋だった。
意味がわからないながらも、差し出されたということは、受け取れということだろうと思い両手で受け取る。それはサッカーボールくらいの大きさだったが、思いの外軽かった。そしてふわふわした感覚。何となく中身が想像できた。

「それ、みょうじにやるよ。」

これで貸し借りなし、ということなんだろう。

「いや、でもこれだと私が貰いすぎだよ。最近テレビでよく聞く過払いだよ。」

「なんだそりゃ。手前の為に買ったもんだ、いいから受け取れよ。」

中原くんは笑いながらそう言うと、私の頭をポンポンと叩いた。そんな嬉しいこと言われたら、受け取らない訳にいかないじゃない。

「中也にしては気が利くじゃない。中身のセンスによるけれど。」

反対側から太宰が口を挟み、開封を急かす。中原くんはセンスがないだの、女心を一切分かってないだのと、太宰が野次ると中原くんが反発する。最後まで煩い二人だが、無視して袋を開けてみる。

「わぁ、可愛い…!」

想像通り、ぬいぐるみが入っていた。それは私が好きだと言った、イルカの可愛いふわふわのぬいぐるみだった。嬉しくて、イルカの顔を眺めた後、ぎゅっと抱きしめる。
その状態で中原くんへ再びお礼を述べると、目線を逸らされてしまったが、少し赤くなっているようだったので照れ隠しかな。


2018.12.31*ruka



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*confeito*