◆ 空席の理由


いつもよりも早く目が覚めて、時間に余裕はあるものの、気持ちに少しの余裕もなかった私は、慌てて登校した。
しかし、待てど暮らせど、彼は登校してこなかった。

そして始まる朝のホームルームで、担任の先生が口にした驚愕の言葉は"転校"の二文字だった。
クラス全員がザワついた。
そんなこと、彼は一言も言っていなかったし、第一、転校することがわかっていたら、転校する前に出掛けて、思い出作りの計画をするのが通常だろう。

私に思い当たるのは一つだけだった。
唯、それを確かめる術も、勇気も、私にはなかった。
それが、私の目の前の席が空席だった理由だ。

そして今度の相手は毛嫌いしている中原くんだ。きっと今まで以上に全力で阻止してくるに違いない。

太宰は私に対して偶に、尋常でないくらいの執着を見せる。何故か聞いても、私を莫迦扱いするだけで終わってしまい、真意は解らないままだ。

話を戻すと、今太宰に中原くんと土曜に出掛けることがバレると非常に拙いということ。どう切り抜けようか迷っていると、天使のような笑顔の敦くんが近付いてきた。

「なまえさん、太宰さん。次の土曜日、武装生徒会の皆で遊ぼうって話になってるんですけど、お二人もどうですか?」

悪魔だった。


2018.11.15*ruka



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*confeito*