◆ 保健室の貴公子


お昼休みになり、更に多くの乙女達が殺到する。私は逃げるように席を立った。
中原くんの呼び止める声が聞こえたような気もしたが、私は落ち着いたお昼を過ごしたい。
今日は屋上に行くのはやめよう。会いたい人も居るし。
私はお弁当と猪口冷糖を一つだけ持ち、保健室へ向かった。

「今日は一緒にいいかな。」

保健室の扉を開くと、見慣れた人影があり声を掛ける。
私の目的の人、芥川くんだった。

「なまえさん、貴女が昼に訪れるのは珍しいな。」

芥川くんはそう言うと、丸椅子を自分の向かい側に用意してくれた。
ありがとうと丸椅子に座ると、机上にいくつかの包みが目に入る。

「ふふ、芥川くんも隅に置けないね。」

茶化すような私に不思議そうな表情を浮かべる芥川くん。真逆…

「僕が何かしたのだろうか。祝い事など少しも思い当たらないが、数名から贈答品を賜った。
奇妙な事にどれも猪口冷糖らしく、僕は施しが必要な程、見窄らしく見えているのだろうか。」

お前もか。
まったく、乙女達の気持ちも浮かばれないな。


2019.02.04*ruka



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*confeito*