◇ 奇妙な事


「大丈夫、そんな風に見えてないよ。」

苦笑いしつつ、彼の前に一つの包みを差し出した。
私が作った猪口冷糖だ。芥川くんは吃驚した顔を見せた。

「今日は聖ヴァレンタインだよ。これは私から。そしてなんと“奇妙な事に”コレも猪口冷糖だよ。」

そう言って包みを軽く振ると、芥川くんの動きが停止した。
え、息してるよね。
心配しかけたら顔が徐々に紅くなってきたので、どうやらちゃんと生きているようだ。
数秒過ぎた頃に、急に咳き込むものだから此方が吃驚する。
慌てて猪口冷糖を机に置いて、芥川くんの背を摩ってあげると、ちらりと横目で私を見て言った。

「ヴァレンタインは好いた男に想いを伝える日だと、前に銀が言っていた気がする。」

「そうだね、一般的に日本では猪口冷糖を添えて乙女が告白する日だね。」

落ち着いた様子だったので席に戻り、お弁当を広げようとした手を掴まれた。


2019.02.05*ruka



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*confeito*