◆ 誘導


「嗚呼、焦れったい。なまえは莫迦なの?莫迦だよね、知っているよ。どうしようもない大莫迦だ。」

莫迦を連呼されて良い気分はしない。
確かに私は頭が良い訳ではないけれど、そんなに言われる筋合いはないし、本当に解らないのだから仕様がない。

「もう、なんなの!解んないよ!」

少し苛ついた声色で太宰に言った。
真顔だった太宰が徐々に口角を上げた。
しまった。どうやら私は言葉の選択を間違えたらしい。
直感でそう思った。

「お莫迦ななまえに、正解を教えてあげるよ。」

太宰の言葉に小さく頷くと、目を閉じるよう指示される。
不安しかなかったが、今更引き下がることも出来ず、おとなしく指示通り瞼を落とした。
視覚という情報を遮断され、心拍数が上がる。
然し、数秒もしないうちに武装生徒会室の扉が開く音がした。

「あれー?まだ皆さん来ていないのでしょうか?」

「本当だ、電気ついてないね。それにしても、あの貼紙なんだろう。」

可愛い弟二人、賢治くんと敦くんの声が聞こえ、反射的に目を開けてしまった。
すると文字通り、目と鼻の先に太宰の顔があった。


2019.02.07*ruka



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*confeito*