◇ お昼休み 3
太宰の傍若無人振りは今に始まったことではないのだけれど、最近は度が過ぎる気がする。
偶には躾も必要か。
私は玉子焼きが刺さったピックを持ったまま、すっくと立ち上がる。
「中原くん、あーん。」
「あ?」
中原くんは驚いた表情をしつつも口を開いたので、玉子焼きを放り込んだ。
「美味しい?」
「まあまあだな。」
傍から見たら恋人同士のような遣り取りを、石の様に固まって見ていた太宰。
少しは反省したかなと視線を向けると、怖過ぎる真顔で中原くんに詰め寄る。
「中也、今すぐ出して。今食べた玉子焼き全部残さず出して。そして今のなまえのあーんは記憶から抹消して。あとなまえの玉子焼きはまあまあなどではなく、最高に美味しいから。」
「てめっ…!やめろ!」
激しく揺さぶられる中原くん。
なんか、ごめん。
「太宰。」
仕方ない、私も甘いな。
中原くんの首を絞めかけている太宰に手招きをする。人命救助だ、これは。
太宰は私の手招きに気付き、中原くんをポイッと捨てて、犬みたいに寄ってくる。
「はい、あーん。」
太宰は嬉しそうに口を大きく開いた。
玉子焼きを放り込んだら、お箸ごと食べられた。
「間接ちゅーだね、なまえ。」
お箸を引き抜きながら「はいはい」と聞き流す。構っていられないと、お弁当を食べ進めた私の腕を太宰が掴む。
「次は、なまえを食べたいな。」
「生憎、食べ物ではありません。」
いつの間にか、中原くんはいなくなっていた。
2018.10.08*ruka
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*confeito*