◆ 期せずして、紅


眠る芥川くんの毛束を掬うと、三つ編みを始めた。
カーテンの房飾りだとか、マフラーの端だとか、そういうものを見ると、どうにも編みたくなってしまうのだ。

「ふふ、可愛い。」

片方を編むと、もう片方も編みたくなるもので。
私は身を乗り出して、反対側に手を伸ばす。

「ん……なまえ、さん?何を…」

少し編んだところで、芥川くんが目を覚ましてしまった。

「あは、は…えっと、これはその」

口籠もりつつ、笑って誤魔化そうと芥川くんを見ると、顔が近かったからか紅くなっていた。
体を退かし元の位置に戻ると、芥川くんは私が触れていた箇所に触れる。
解けかけているものの、三つ編みにされている事が手触りで解ったのだろう。
怪訝そうな顔を向けられた。

「えへ。三つ編み可愛いよ、芥川くん。」

苦し紛れに笑ってみたが、次の瞬間、芥川くんはわしゃわしゃと髪を掻いて、三つ編みをバラしてしまった。

「あぁ!」

「なまえさん、男に"可愛い"は褒め言葉ではない。」

折角編んだのに、と落胆の声を上げるも一蹴されてしまう。
敦くんは可愛いって言っても、喜ぶと思うんだけどな。
しょんぼりしつつそんなことを考えていると、名案が浮かび上がった。


2019.04.13*ruka



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*confeito*