◇ お願いがあるの


放課後。
武装生徒会室に一番乗りした私は、ある人を待つ。
会議が始まるまでの時間が狙いだ。
大体いつも早くに来ているから、そろそろ来る頃だと思うのだけれど。
自席で頬杖を突きながら、掛け時計を眺める。

すると数分も経たないうちに、ガラリと扉が開かれる音がした。
視線を時計から入口へ移すと、笑顔の敦くんが居た。

「なまえさん、今日は早いですね!」

私は微笑み返し、無言で手招きをする。
敦くんは何の疑いもせずに私の元へ駆け寄ってくる。子犬みたいで可愛い。
私は隣の席の椅子を向かい合うように引くと、そこに座るよう促す。
ちょこんと座った敦くんの、非対称に長い髪にそっと触れる。
敦くんは吃驚したように肩を揺らした。

「い、いきなり、どどど、どうしたんですか!?」

動揺が半端ないな。
思わず吹き出してしまった。
真っ赤になった敦くんがじとりとした視線を寄越したので、ごめんと謝った。
頭を撫で、流れで伸びた毛束に指を滑らせる。

「ね、お願いがあるの。」

敦くんがゴクリと生唾を飲み込む音が響いた。


2019.04.14*ruka



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*confeito*