◇ でも負けない


「矢っ張り可愛いよ、敦くん!あっ、次は編み込みをしてみたい!自分の髪じゃ出来なくて」

「随分楽しそうだね、なまえ。私も仲間に入れておくれよ。」

完全に油断していた。
燥ぎ過ぎて、周りが見えていなかった。
それにしても、扉が開く音がしただろうか。
否、敦くんも驚いている。
背後から私の首周りにまとわりつくこの男、太宰の登場に。

「だ、太宰…」

「太宰さん!いつから居たんですか?全然気づきませんでした!」

「今さっき来たとこ。」

それよりも、と背中に伸し掛かる重みから、不穏な空気を感じる。
太宰は私の耳元で言った。

「見せつけてくれるね。こんなに燥いでいるなまえを見るのはいつぶりだろう。」

言い知れぬ恐怖。
何も悪いことなんて一つもしていないのに。
可愛い天使な後輩と戯れていただけなのに。

然し、今日の私は怯まない。
何故なら、太宰にもやりたい事があったからだ。


2019.04.16*ruka



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*confeito*